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小原嘉明『入門 進化生物学』

中公新書での進化論に関する入門書です。

 

入門! 進化生物学 - ダーウィンからDNAが拓く新世界へ (中公新書)

入門! 進化生物学 - ダーウィンからDNAが拓く新世界へ (中公新書)

 

 

例が多く、かつ取り上げられるそれぞれの生物がとてもユニークなので驚かされました。入門書としてはとても良い出来ではないでしょうか。

 

 利己性と利他性

買うときに気になっていたのは、第6章の動物の利他性 / 利己性に関する章です。

 

半世紀ほど前までは、動物の行動原理は利他的、すなわち同種集団全体の利益のために行動すると理解されてきたらしいですが、進化論と相容れないという点から、利己的動物観が通説的見解になったそうです。

 

すると、外観上は利他的行動に見えるような行動をどう整合的に解釈すればよいのかが問題になります。例えば、ナミチスイコウモリは毎晩餌を取りに出るものの、その成功率はそれほど高くない。ただそうした場合、餌取に成功した個体が、失敗した個体に対して餌を融通するという奇特なことが行われる。しかし、これは利己的動物観に合致しないように見えてしまう...。

 

これは、「互恵的利他行動」という行動形式で説明されます。研究によれば、餌を融通された場合には、後日に立場が逆転した場合に餌を融通し返すという行為が行われるとのこと。つまり、時間軸を広く取ってみれば、両個体の関係性は互恵的になっているという訳です。この背景には、融通制度がある方が、種集団全体で見たときに生存率が高まるという事情があったりします。(なし:24、あり82%)

 

ただ、こうした行動が発現するには一定の条件が必要になるようです。ここまでの説明からも明らかなように、互恵的行動が行われるには、ある程度の期間以上、集団で行動するようなケースに限られ、やはり血縁関係がある場合が多いとのこと。こうして、全体として、長期で見た場合には種の存続に合理的な行動として言うことができる訳です。

 

 

ところで、ここらへんの生物学的知見って、人間にどの程度あてはまるんでしょうね。(実のところそこのヒントを知りたくて本書に手を伸ばしました)